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徳島地方裁判所 昭和28年(ワ)8号 判決 1955年6月17日

原告 柿本実

被告 植田耕治

主文

徳島市中常三島町一丁目十四番宅地五十坪同所十四番の二宅地六坪と同所十五番宅地四十一坪二勺同所十五番の二宅地三坪の境界線は、別紙図面コンクリート塀の東南角を(イ)点とし、その西南角を(ロ)点とし、(イ)点と(ロ)点を結んで西方に延長した線と、十五番の二、十四番の二両宅地の西の外縁とが交る点を(ハ)点とし、右(イ)(ロ)(ハ)を結ぶ線なることを確定する。

訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その一を被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、原告所有の徳島市中常三島町一丁目十四番宅地五十坪(以下(一)地と略称)同所十四番の二宅地六坪(以下(二)地と略称)と被告所有の同所十五番宅地四十一坪二勺(以下(三)地と略称)、同所十五番の二宅地三坪(以下(四)地と略称)の境界は原告所有地の北側のコンクリート塀の東端の中心を(A)点とし、原告所有地の西端にある溝の北側より一尺五寸北方にある地点を(B)点とし、(A)点と(B)点を連絡する線なることを確定する。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として本件(一)(二)の宅地は原告が昭和二十三年一月二十五日訴外蔦新吉より買受け、該地上に建物を建築した。然して被告は訴外松崎昌雄より(三)(四)の宅地を買取り、昭和二十四年二月頃該地上に建物を建築したのであるが建物の地盤が境界を超えて原告所有の土地に侵入してきたので原告はその不法を詰り地盤建設の中止方を申出たが被告はこれに応じなかつたのみならず、却つて原告と被告との本件境界はコンクリート塀より南にあると主張するに至つた。然しながら該土地は原被告の前主である蔦新吉及松崎昌雄が所有していた当時、境界線上に相互に費用を平等に支出してコンクリート塀を築造し、その中心線を境界と定めたもので、原告はその指図に従つてこれを買受けたものであり、又実測坪数においても原告主張の境界線に従つてこれを測量すれば(一)(二)の宅地は五十六坪、(三)(四)の宅地は四十四坪二勺となり公簿面積と合致する次第である。よつて本訴請求に及ぶと述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は、被告所有の(三)(四)の宅地と原告所有の(一)(二)の宅地の境界線は(三)の東南隅にあるコンクリート塀より約五寸南へ進んだ点を(A′)点とし、(A′)点より直線に西へセメントのコンクリートの(B′)点まで進み、更に右コンクリートを通じ(C′)点まで進み、(C′)点より(四)の西南端にある溝の(二)点まで進んだ地点であることを確定する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として(三)(四)の宅地は被告が訴外松崎昌雄より買受け取得したものであるが、右売買の際昌雄の父憲一は被告の母あやのに対し、本件宅地の境界を被告主張の如く指示したのである。その後原告は昭和二十四年一月中旬頃、被告は同年三月中旬頃それぞれ現在の家屋を新築し、移転して来たのであるが、同年五月頃本件宅地の境界を原告と被告の母とが話合の結果被告主張の如く確定した結果、爾後原告より何等の申出もなかつたのであるが被告の母が雨だれ水の桶を掛けることを相談した結果突如原告は本訴提起に及んだもので理由がないと述べた。<立証省略>

理由

原告が本件(一)(二)の宅地を所有し、被告が(三)(四)の宅地を所有していること、右(一)(二)の宅地の北側と(三)(四)の宅地の南側が相隣接していることは当事者間に争ない。よつて按ずるに証人松崎憲一、泰シゲル、仁木マサの各証言と検証の結果を綜合すると、本件宅地(一)の略東北隅(三)の略東南隅より略西に向つて幅約六寸の堅固なコンクリート塀が延びていること、右コンクリート塀は約三十年前(三)の宅地の所有者であつた泰某が境界線より少し控えて換言すれば多少北寄りに作成したものであること、その後(三)の宅地は右泰より訴外松崎昌雄に譲渡されたが、その際(三)と(一)の両地の境界はコンクリート塀の外側として売渡されていること、右コンクリート塀よりなお北側に存すべき境界線の位置は現在においては必ずしも明瞭でないこと、訴外仁木マサは昭和十八年から戦災時まで十四番宅地上の家屋を借受け居住していたが、右コンクリート塀を境界と信じ平穏公然コンクリート塀の南側一杯に宅地を使用していたことを認め得べく鑑定の結果に徴すると、右コンクリート塀の南の外側を西へ見通す線をもつて境界となすときは、係争宅地の双方の実測面積の割合が、コンクリート塀の東南端より五寸南の地点を基点とする被告主張の境界線(但し検証の結果によれば原告主張の中間のコンクリート塀B'

凡そ境界確定の訴において、証拠により境界の何処に存するやを始めより確定し得た場合においてはこれを以て境界線となすべきは論をまたないところであるが、然らざる場合においても占有の状況、地形地物或は公簿面積等、その他諸般の事情を綜合して、境界線を確定すべくその確定に当つては不自然なる境界線を造作し、紛争の因を他日に貽するが如きは、そもそもこの訴の第一義に反するものといわなければならない。かような観点から本件を見ると、前示コンクリート塀の南の外側を見透す線をもつて境界となすべく換言すればその東南端を(イ)点とし、その西南端を(ロ)点とし、右(イ)点より(ロ)点を結び、更に西方に延長して本件宅地の西縁と交る点即ち(ハ)点を結ぶ線をもつて境界となすを相当とする。(証人植田あやのの証言に徴するも未だ右の如き断定を覆すに足りない。)よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 宮崎福二)

図<省略>

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